童話の森活動レポート2022
童話の森 活動レポート 2022
童話の森 活動レポート2022 は新美南吉記念館内の童話の森コーナーにて配布中です。
PDFの閲覧とダウンロードはこちらからどうぞ。
南吉童話の世界へつながる森を
より多くの人が訪れ楽しめる場所へ。
童話の森は、童話作家・新美南吉を顕彰する新美南吉記念館に併設された小さな森です。南吉の生まれ育った愛知県半田市岩滑にあり、南吉の生家も歩いてすぐのところにあります。南吉の生きた大正から戦前、この森は岩滑の住民にとって身近で大切な里山でした。南吉さんの作品にはこの森や岩滑地域に生息する植物や生き物、風景が多く登場します。それは、南吉が自分の生まれ育ったふるさとを舞台にお話をかいたから、そこに生きる人々の生活を描いた作家だからです。
この森は人と身近な関係性にあった里山としての時期から、高度成長期を経てだんだんと人が寄りつかない森へと変わっていきます。その後、南吉の代表作である『ごんぎつね』の舞台でもあるこの森を生かし、新美南吉記念館が建てられ、散策路として整備、ただ年々植生が変化し、”ヒサカキ“や”カクレミノ“など陰樹中心の薄暗い藪になり、人が入りづらい暗い森になっていました。
そんな中、2020年秋、”童話の森で。プロジェクト“の活動が始まりました。まずは関心のある有志数名で、この森を数十年にわたり見てこられた地元の活動家とともに自然観察会を実施。まだまだ南吉作品に登場する植物や生き物が残り、この森から新美南吉の作品世界へとつながる可能性を大きく感じました。
2021年はこの森を知り、この森をどうしていきたいかを、専門家をお招きしながら考えていくこと、暗い森を明るくし、より多様性のある植生に戻していくための間伐、そしてこの森でどのように楽しめるか、朗読会や上映会にチャレンジしました。
2022年は引き続き、森を知り、森を整えながら、せっかくなのでより多くの人に見てもらえるようにと「童話の森の文化祭」を実施しました。多くの方々が森を行き交う光景を見ることができました。
2023年は、森に安定的に人が楽しめる空間作り、森の周りの環境との連動、長期的な構想作りを進めていきます。
2022 活動日誌
森について知る その1
森と仲良くなる
自然観察会を開催
童話の森には新美南吉の作品にも登場する植物が数多く生えています。森林インストラクター伊藤佑三氏のガイドのもと、自然観察会を実施しました。森と仲良くなるために樹木や草花の名前を覚えながら散策しました。
楽しく解説してくれる伊藤さんの自然観察会。樹木や草花の名前や特性を知ると、森の景色が変わってきます。
森について知る その2
森の整備方針を考える
南吉さんと同郷で半田市岩滑出身の愛知学院大学准教授・富田啓介氏をお招きし、森の整備方針について考えました。
整備方針
・本来そこにいた生き物がずっと生息できる空間
・訪れる人が楽しく快適に過ごせる空間
・新美南吉の作品世界を体感できる空間
森を整える その1
整備活動で、人が集う
明るい森を目指して
月に一度、森の清掃、間伐作業、植栽活動を行なっています。最初は数名で始まった活動が今では30名を超える仲間が一緒に活動しています。メンバーはこどもから80代のベテランまでさまざま。新美南吉の作品に出てくるような多様性のある森へ、多様性のあるメンバーで活動しています。
森の隣には小さな花壇も。作品にちなんで綿(わた)やサクラソウ、菜の花など、季節の植物を育てています。
森を整える その2
庭師の技術的観点から
植物の剪定を学ぶ
南吉さんと同郷で半田市岩滑出身の愛知学 愛知県各所で活動する庭師のワタナベジュンさんをお招きし、森の美しさの観点から剪定や伐採などのポイントを教えていただきました。
現在の森の植生を見ていただき、成長後を想定した美しい姿を保つ剪定のコツを教えていただきました。
童話の森で。プロジェクト
アートが森を彩る
「童話の森の文化祭」開催
整備を続けてきて少しずつ明るく人が入りやすくなってきた森に、もっとたくさんの方に来てもらいたい、ということで”物語が生まれる森。童話の森で会いましょう“をコンセプトに「童話の森の文化祭」を計画しました。新美南吉にインスピレーションを受けた作家とともに実施した「童話の森のミュージアム」ほか、さまざまな企画でたくさんの方に童話の森を楽しんでいただきました。10月29日~11月6日開催。
当日の様子を公開していますのでぜひご覧ください。
森の循環を考える
森の間伐木材で
楽しい木工ワークショップ
森で間伐した木材を有効利用するため、木工作家のicura工房 筒井則行氏をゲストにさまざまなワークショップを実施。第一弾は「童話の森の住人たちを作ろう!」。森のヒサカキをカットし、電熱ペンで顔を描き、頭に帽子を被せて完成。一般の方にもたくさんご参加いただきました。第二弾は「バターナイフをつくろう」。森で伐採した生木の枝を小刀で削って作りました。