童話の森で。プロジェクト2025 活動レポート

南吉童話の世界へつながる森を、
より多くの人が訪れ、楽しめる場所へ。

童話の森は、童話作家・新美南吉を顕彰する新美南吉記念館に併設された、小さな森です。
南吉の生まれ育った愛知県半田市岩滑にあり、生家からも歩いてすぐの場所にあります。

南吉の作品には、この森や岩滑地域の植物や生き物、風景が数多く登場します。
それは、南吉が自らのふるさとを舞台に、人々の暮らしを描いた作家だったからです。

かつて里山として人と身近な関係にあったこの森は、高度成長期を経て次第に人の手が入らなくなり、 薄暗く人が入りづらい森へと変わっていきました。
散策路として整備された後も、植生の変化により、森の魅力が見えにくくなっていました。

こうした状況の中、2020年秋に「童話の森で。プロジェクト」が始まりました。
有志のメンバーと、この森を長年見てきた地元の活動家とともに自然観察を行い、 南吉作品につながる植物や生き物が今も残っていること、そしてこの森が物語の世界へとつながる可能性を持っていることを実感しました。

活動の基本は、まず森を知ること。
月に一度集まり、自然観察を重ねながら、森の植生や季節の移り変わり、南吉作品との関係を学んでいます。
あわせて、間伐や清掃など森を整える活動も毎月継続しています。

森が少しずつ整いはじめた2022年からは、「童話の森の文化祭」を開催し、 多くの人に森を歩き、楽しんでもらう機会をつくってきました。
今年は森の循環に目を向け、コンポストの導入にも取り組んでいます。

童話の森で。プロジェクトは、
人の関わりによって、もう一度この森が物語の舞台として息づくことを目指し、活動を続けています。


活動1 森を知る

森と仲良くなる

自然観察が活動の基本

童話の森には、新美南吉の作品にも登場する植物が数多く生えています。
活動日には毎回、自然観察を行い、その時々の森の様子をみんなで感じ、楽しみます。

自分たちで調べ、学びながら、樹木や草花の名前や特性を知っていくと、
これまで何気なく見ていた森の景色が、少しずつ違って見えてきます。

森を「知る」ことは、
この場所と仲良くなるための、最初の一歩です。


活動2 森を整える

整備活動で、人が集う

明るい森を目指して

月に一度、仲間とともに童話の森の整備を行っています。
活動を始めた当初は、木々が茂り光の入りにくい暗い森でした。
まずは間伐から始め、少しずつ光が届く環境を整えてきました。

守りたい木のまわりを整え、草刈りや清掃を続ける中で、
新しい植物も見られるようになり、森の表情は変わりつつあります。
今年は枯れ木の片付けや散策路周辺の整備にも取り組みました。

参加メンバーは20代から80代までさまざま。
世代を超えて人が集い、手を入れながら、多様性のある森を育てています。

また、落ち葉や刈った草を活用する森のコンポストを導入し、
森の中で循環を生み出す取り組みにもチャレンジしています。


活動3 森で楽しむ

ひらかれた森で、物語に出会う

せっかく整いはじめた童話の森を、地域の方や南吉ファンに実際に楽しんでもらおうと、 「童話の森の文化祭」を開催しました。
森を歩き、立ち止まり、感じることを大切にしながら、新美南吉の世界観にふれる一日です。

テーマは「センス・オブ・ワンダー」。
新美南吉の作品にインスピレーションを受けた作家によるアート展示をはじめ、 森の中での読書や音楽、自然観察会、トークセッションなど、多彩な企画を実施しました。
訪れた人がそれぞれのペースで森と向き合い、五感を通して森の魅力を味わえる時間となりました。

会場では、森の間伐材を使った遊びや体験も行いました。
どんぐりを転がして遊ぶ仕掛けや、輪切りにした木を投げて木の上に乗せる遊びなど、
森の素材そのものにふれる場をつくりました。

  • 森の間伐材で、どんぐりを転がして遊べる仕掛けづくり
  • 間伐材の輪切りを投げ、木の上に乗せる遊び
  • 森の植物を乾燥させて楽しむ、お茶会
  • 森で育てた綿を紡ぐ体験
  • 森の植物で、たたき染

童話の森の文化祭は、
「整えた森を見せる場」ではなく、
森の中で過ごし、遊び、感じることで、物語の世界に出会う場です。
これからも、森と人との新しい関係が生まれる時間を大切に育てていきます。