【 プロジェクト 】矢勝川堤の彼岸花 植栽活動

矢勝川堤の彼岸花

矢勝川堤の彼岸花 植栽活動

矢勝川堤におよそ1.5km続く真っ赤な彼岸花の群生。約300万本の彼岸花が咲く幻想的な景色を目当てに、毎年たくさんの来場者が矢勝川堤を訪れます。南吉のふるさと風景として、地元有志の方々と共に行っている彼岸花の維持管理と植栽活動の様子をご紹介します。


彼岸花で鮮やかに赤く染まる矢勝川堤

童話の里を彩る300万本の彼岸花

秋のお彼岸の頃、半田市と阿久比町の境を流れる矢勝川堤を東西約1.5kmに渡って咲き誇る300万本の彼岸花。新美南吉の童話『ごんぎつね』に描かれたような「赤い布のようにさきつづいて」いる幻想的な風景が広がります。

見頃とエリアの紹介

開花時期は9月中旬から10月初旬まで。「彼岸花」の名前のとおり、秋のお彼岸の頃に開花します。

開花時期には「ごんの秋まつり」を開催。SNSで彼岸花の開花状況も発信され、毎年たくさんの来場者で賑わいます。

見晴らしの良い遊歩道コースを散策しながら、矢勝川の堤東西約1.5kmに渡って咲き続ける約300万本の彼岸花を鑑賞できます。

遊歩道までは名鉄半田口駅から徒歩で約10分。期間中は駐車場が大変混み合いますので、ご来場の際はぜひ公共交通機関をご利用ください。詳しくは半田市観光ガイドにて「ごんの秋まつり」イベント詳細をご確認ください。

開花時期に合わせて「ごんの秋まつり」を開催。

エリア

開催イベントと関連リンク(外部サイト)


矢勝川堤の彼岸花、はじまりの物語

「ある時、ふと思い立ってはじめた」小栗さんの想いが拡がって生まれた風景

現在、彼岸花の維持管理は南吉の生まれ故郷である半田市岩滑の地域の方々とともに活動しています。

最初に彼岸花の植栽をはじめたのは、半田市岩滑に生まれ育った小栗大造さんでした。小栗さんは、ある時ふと思い立ち、童話『ごんぎつね』の一節の「ひがん花が、赤い布のようにさきつづいて」いる風景を矢勝川堤につくろう、と活動をはじめました。

当初は賛成する声ばかりではなかったものの、活動を続けるうちにひとりまたひとりと賛同者が集まりました。草刈りや植栽の活動を続けて、彼岸花の赤い絨毯はどんどんと拡がっていきました。

現在の約300万本にまで拡大した彼岸花の幻想的な風景は、小栗さんの想いに多くの賛同者と共感が集まり、地域の方々のふるさとへの想いが形となった風景なのです。

小栗大造さん

美しい景観を支える「矢勝川の彼岸花を守る会」

守り受け継ぎたいふるさとの風景

秋に一面の彼岸花を咲かせるためには、年間を通じたメンテナンス管理が必要です。彼岸花の景観はたくさんの方々のボランティア活動によって守り受け継がれています。現在は「矢勝川の彼岸花を守る会」4代目会長大島広信さんが中心となって活動を行っています。

「全国各地から彼岸花を見に来る方々に喜んでもらいたいから」と話す大島さん。最初は「草取りくらいなら手伝える」と気軽にはじめたのがきっかけだったそう。それが今では、ほぼ毎日のように矢勝川堤へ訪れメンテナンス作業をしてくださっています。

同じく日々矢勝川堤で作業してくださっている松本勉さんは、矢勝川の彼岸花を守る会と矢勝川のサイクリングロード美化活動を兼務。「サイクリングロード完成時はツツジが咲いていたが、枯れてしまい雑草が生えて荒れてしまっていた。(松本さんの奥様が)なんとかしたい、と言ったので」荒れてしまっていた雑草地を再び整備する活動を始めました。除草作業、コスモスやひまわりなどの花の植栽を続けています。

矢勝川の彼岸花を守る会 4代目会長 大島広信さん
矢勝川の彼岸花を守る会と矢勝川のサイクリングロード美化活動を兼務する松本勉さん

地域の子どもたちと行う植栽活動

彼岸花は、植えっぱなしにしておくと根が詰まり過ぎてしまいます。きれいに咲かせるために、6月頃に球根をひとつひとつ丁寧に植え直します。

彼岸花の球根を植える植栽活動には、地域の子どもたちも参加しています。大島さんの説明を聞いてから、小さな手で球根をひとつひとつ土に植えていきます。子どもたちにとって球根はとても不思議なようで、ボランティアさんは「なんでー?」「どうしてー?」と質問攻めにあいます。

植栽活動に参加する子どもたちも増え、初夏の矢勝川堤に元気で賑やかな声が響くのも、この地域の風物詩となりつつあります。

子どもたちに植栽活動に参加してもらうことで、ふるさとの景観を守る活動を次の世代へと伝え受け継いでいます。

ふるさとの風景にきれいな花を咲かせたい

秋に一面の彼岸花を咲かせるため、年間ほぼ毎日作業をしてくださっている大島さんと松本さん。広大な矢勝川堤は除草作業だけでも大変な労力です。「そりゃあ大変だけど、ここへ来る方々に喜んでもらいたいからね」と笑うおふたり。彼岸花の他にも、季節の花を植えた花畑を育てています。広々とした空のもと、野花が自然に咲いたような花畑は人気フォトスポットにもなっています。ぜひ彼岸花シーズン以外も大島さん松本さんが丹精込めて咲かせる季節の花々を楽しみに訪れてみてください。

彼岸花の時期以外にも楽しんでもらいたいと、季節ごとの花畑も管理
権現山がよく見えるように選んだ背丈の低い矮性ひまわり、ポピー、コスモスなどが咲く
咲き終わったひまわりから翌年用の種を採取
極小のポピーの種も丁寧に採取します

矢勝川堤を歩くと、権現山のふもとに広がる『ごんぎつね』の舞台となった新美南吉のふるさとの景色を味わうことができます。花が咲き、蝶が舞い、カエルの鳴き声が聞こえてくる…そんな南吉の愛したふるさとの風景。この景観をこれからも大切に受け継いでいけるよう、地域の方々と共に活動していきたいと思います。


2023 ごんの秋まつりレポート

2023年9月下旬、ごんの秋まつりがはじまりました。今年は猛暑の影響でやや遅めの開花となりました。矢勝川に彼岸花の赤い絨毯がひろがり、たくさんの方が楽しみに訪れています。

観光案内には、晴れやかな笑顔の大橋さんがいらっしゃいました。年間ずっとお手入れを続けてきた大切な彼岸花が咲く日。この日のために毎日毎日、除草作業などの活動をされています。今年もたくさんの来場者が訪れ、美しく咲く彼岸花を楽しんでいます。おひとりおひとりに嬉しそうに声をかけてご案内されていました。

案内テーブルにはかわいいお手紙が掲げてありました。一緒に球根の植栽をした子どもたちからもらったそう。いつもに増してにこにことお話ししてくださいました。

南吉の故郷に育った子どもたちの記憶に、自ら植えた彼岸花がきれいに咲いたことが大切な思い出として心に残ってくれたら嬉しいですね。

ごんの秋まつりが終わると、また来年に向けての準備作業が始まります。また来年も矢勝川の彼岸花がきれいに咲くよう大橋さんたちの活動が続いていきます。